第45回スプリンターズS回顧
ドイツの3歳牝馬デインドリームが勝利した
凱旋門賞も世界中の競馬ファンを驚かせたが、
このスプリンターズSも世界を驚かせる
結果だったのではないだろうか。
デビュー以来、
21戦17勝2着4回とオール連対を続けていた
シンガポールのロケットマンが初めて連を外し、
4着に敗れたのだから。
「ロケットマン包囲網が出来ていたのではないか」
という指摘がある。
その指摘は間違っていないようにも思える。
常に前が壁になっていた上に、
4コーナーから直線に入るところでは、
勝ったカレンチャンにも外から蓋をされる形となった。
まさに包囲網、
出す所がなかったことは確かだろう。
だがロケットマンはスタートダッシュで
ハナを奪いに行くことが出来なかったのも確か。
途中で主導権を取ることも出来なかった。
初めて走る日本の競馬に対応し切れなかったことは確かだろう。
だが「ロケットマンに日本のスピード競馬は合わない」と
断定するのは間違っているように思える。
何故なら4着に踏み止まっているのだから。
もしこのスプリンターズSの前に
日本でもう一戦を消化することが出来ていたら、
もっと違う結果が出ていたかもしれない。
その「包囲網」作りに関わった
パドトロワ、エーシンヴァーゴウがそれぞれ2着・3着。
前半3ハロン33秒0。
2ハロン目、3ハロン目が10秒台のレースは、
先行馬にとっても厳しい流れだった筈。
最後はカレンチャンに屈したが、
この粘りは評価に値するものだろう。
日本のスプリンター達も
ロケットマンに負けず、劣らず、
高いレベルにいるのである。
この結果はそのレベルの高さを証明したと言えるだろう。
第15回シリウスS回顧
シリウスSを優勝したのは
今回が初ダートだったヤマニンキングリー。
この馬はかつて大仕事をしたことで知られている。
2年前の2009年、
あのブエナビスタを札幌記念で破ったのが
この馬だった。
小回りコースを利したものとはいえ、
多くの競馬ファンを驚かせた大金星から2年。
ヤマニンキングリーは
またファンをビックリさせた。
ヤマニンキングリーの父はアグネスデジタル。
中央・地方・海外、
そして芝・ダートを問わず、
オールラウンドな活躍を見せ、
数多くのG1勝ち・重賞勝ちを果たした馬である。
その血を引くヤマニンキングリーが
こうしてダート重賞を勝つのは、
決して不思議なことではないのかもしれない。
しかしこれまで全くダート戦を使われなかった以上、
その適性を疑問視する声が上がるのは当然で、
そんな「不安」という評価を
一掃してしまうのだから、
驚かざるを得ない。
現在6歳。
地方競馬も含めたダートグレード戦線を
戦っている馬たちの中には、
8歳、9歳になっても現役で、
しかも好成績を挙げる馬もいる。
これから主戦場をダートに移しても
ある程度の活躍が期待できるのではないだろうか。
しかし、父アグネスデジタル同様、
芝・ダートの両方で使われる可能性もある。
レーススケジュールを組みやすくする上では、
両方使い続けるという考え方もあっていいのかもしれない。
残念なのはこのダート適性に
もっと早く気がついて欲しかった点。
ブエナビスタに勝っていなかったら
もう少し早くダートで使われていたかもしれないと思うと、
少々複雑な気分である。
第46回札幌2歳S回顧
単勝オッズ1.6倍。
札幌2歳Sを制したグランデッツァは
断然の1番人気に応えてのものだった。
これほどの高い支持を集めた理由は
やはり未勝利戦で2着馬に1秒3差、
1分50秒9という、
このメンバーの中でも破格の時計をマークしたことが
理由なのだろう。
もちろんマルセリーナの半弟という、
血統面での裏付けもこの人気になって反映した点も
あるのだとは思うのだが。
この札幌2歳Sではその走破タイムを
更に0秒1詰める1分50秒8をマークした。
しかも前日からの雨で
馬場状態の発表が稍重だった点を考えると、
更に評価を上げなければならないだろう。
早くも「来年のクラシック戦線に向けて楽しみ」
といった評価をするメディアが現れているが、
決して大袈裟ではないと思う。
今後に注目すべき存在ではないだろうか。
同時に評価しなければならないのは、
2着のゴールドシップ、
3着のマイネルロブストの2頭が
このグランデッツァと0秒1差だったという点。
4着のベストディールも0秒4差。
この辺りまでは今後の出走レースでも
注目すべき存在になりそうだ。
更に5着のヒーラも0秒7差、
6着のラシンティランテが0秒8差、
7着のマカハが0秒9差、
この3頭も今後の成長次第では
無視できない存在となる可能性だと思われる。
この先も来年のクラシック戦線が楽しみになる2歳馬が
続々とデビューするだろう。
だがこれらの馬たちの実力も忘れないようにしたいものだ。
この先の2歳馬戦線が楽しみになってきた。
第57回オールカマー回顧
戦前から「何が何でも逃げたい馬」がいないことだけは
はっきりしていた今回のオールカマー。
ならばシャドウゲイトが逃げる、
という展開に納得した人は多かったに違いない。
だが1000メートル通過60秒5という流れは
全くの予想外だった。
中山の芝2200メートル戦が舞台であることを考えれば、
これは少し速すぎた。
シャドウゲイトが背負っていた58キロという斤量が
「前へ、前へ」という騎手心理を生んだと
いうことなのかもしれない。
速い流れになった。
その流れを3番手で追走したのがアーネストリー。
シャドウゲイトよりも更に1キロ重い59キロを背負って、
この前目の位置から抜け出して勝利したアーネストリーは
さすがグランプリホースと言わなければならないだろう。
確かに相手は強くない。
しかし自身も一頓挫あって札幌記念を使えなかった分、
ベストの状態ではなかった筈。
そう考えると次走の天皇賞(秋)でも
馬券検討の際には考慮すべき1頭に入れる必要はありそう。
府中向きの脚質ではないことは明らかだが、
地力はかなりのものがあることはハッキリしている。
速い流れが明らかに味方したのは
2着のゲシュタルトではないだろうか。
最内枠を引いた分、
経済コースを回って脚を貯めることが出来た点も大きいが、
前潰れのような展開になったおかげで
この馬がハマった形となった。
伸び悩みを指摘する声もあったが、
3着に入った中日新聞杯以外は
全てG1・G2戦。
アーネストリー以外は低調なメンバーだったG2戦で
流れが向けば、
この2着という結果は当然の事だったのかもしれない。
第59回神戸新聞杯回顧
神戸新聞杯の結果から
菊花賞をどう読むか?
ポイントとして以下の点を指摘する人が多い。
4コーナーから直線に入ったところで、
オルフェーヴルとウインバリアシオンが並ぶ場面があった。
この位置からの叩き合いで
突き放したのがオルフェーヴル。
ここでこのダービー1・2着馬の力の差が出たのではないか?
上がり3ハロンはウインバリアシオンが33秒2に対し、
オルフェーヴルは32秒8。
この点から考えても
2頭の力の差は歴然としている。
確かに今回の結果から見えてくる結論はそうだろう。
だが1つだけ考えておかなければならない点がある。
それはこの神戸新聞杯は
この2頭にとってはあくまで「前哨戦」だという点。
仕上げも本番・菊花賞に向けて
「余裕残し」の部分はあるだろう。
本番までに両者ともまだまだ上積みがある筈だ。
更に誤解を恐れずに書けば、
「勝たなければいけないレース」ではない。
「前哨戦」だから出来ることもある。
ウインバリアシオンの鞍上が安藤勝己である点を
覚えておきたい。
本番を前にわざわざ馬体を併せに行く競馬した背景には
「相手の脚を測る」目的もあったのではないか?
ダービーでも直接対決はあったが、
不良馬場だっただけに参考にはならない筈。
今回のような良馬場で
直線の長い阪神・外回りコースだからこそ、
こうした「脚比べ」は可能になる。
安藤勝己は地方・笠松競馬の出身だ。
こうした「前哨戦」の意味も良く知っている筈。
「勝たなければならない」というレースではないところで
見せたこの「脚比べ」。
菊花賞では同じ位置から
「ヨーイドン」という競馬にはならないだろう。
一見、ウインバリアシオンの完敗に見える今回の神戸新聞杯。
しかし本番の菊花賞においてはこの結果を見て、
「勝負付けは済んだ」と思わない方がいいと思う。
